要介護者の健康状態(体温)の把握

体温を図るときは、体温計を挿入する前に、
まず、腋窩の汗を拭き取るようにします。

 

なぜなら、汗で濡れていると体温計を肌に密着できませんし、
汗ガタイ表面から蒸発する際には気化熱が体から奪われ、
体温が下がるため、正確に測定することができないからです。

 

ですから、体温を測定する前は、
要介護者(利用者)が汗をかいているかどうかを確認し、
汗を拭いてから体温計を挿入するようにします。

 

ただし、体温測定中に発汗があった場合は、
そのままの状態で測定を続けます。

 

また、片麻痺がある要介護者(利用者)の場合は、
健側で体温を図るようにします。

 

これは、麻痺側では血流量が低いため、
健側よりも体温が低く不正確だからです。

 

また、麻痺側は筋力が低下していて、
体温計が保持できない危険性もあります。

 

●体温計の挿入の仕方

 

体温計は、腋窩の皮膚温が最も高い腋窩動脈に近い部分に、
体温計の先端があたるように、前方下から体軸45度の角度で挿入します。

 

高齢者や、痩せている要介護者(利用者)の場合は、
腋窩がくぼんでいるため、鋭い角度での挿入が必要です。

 

そして、上腕を前胸部よりに密着させたり、
タオルを巻くなどして挟みます。

 

肥満気味の要介護者(利用者)の場合は、
水平に近い状態に、体温計を挿入するようにします。

 

●悪寒や戦慄が現れているときは体温を図らない

 

細菌やウイルスが侵入すると、生体の防御反応として発熱します。

 

発熱すると、体温調節中枢が働き、通常の体温よりも高くなります。

 

しかし、血液の温度は、体温調節ちゅうすうの調節水準よりも低いので、
設定された高い水準まで体温を上げようと、
体熱の放散を減らし、体熱の産生を増やします。

 

このときに、皮膚血管の収縮、立毛筋の収縮が起こり、
寒気を感じるようになります。

 

また、筋肉運動によって体熱の産生を増やそうとし、
その反応によって振るえが生じます。

 

この振るえによって熱が産出されます。

 

このような寒気や振るえの現象が、悪寒であり戦慄です。

 

熱が出る前兆は、悪寒や戦慄が起こりますから、
この前兆の段階で熱を測っても、あまり意味がありません。

 

高熱になると、悪寒や戦慄は消失しますから、
消失し、要介護者(利用者)が落ち着いてから、
体温を測るようにします。

 

悪寒が始まったら、身体を暖かくして休ませ、
気持がよいと感じるようであれば氷枕等を使います。

 

汗をかいているときは、清拭を行って寝衣を取替え、
水分を多めにとって安静にしてもらうようにしましょう。

 

発熱時は、エネルギーの消耗を少なくするため、
安静にしてもらうようにします。

 

体温は、熱の産生と放散のバランスが調節されていてこそ、
一定に保たれています。

 

熱の産生には、基礎代謝や筋肉運動、甲状腺ホルモンなど、
交感神経の興奮や体温そのものの作用が関与しています。

 

発熱は、熱を過度に産生しているのか、
放散が抑制されているのかのどちらかによって起こっていますが、
どちらにしてもエネルギーの消耗を少なくすることが必要なため、
安静にすることが大切です。

 

●発熱時に身体を冷やす行為について

 

冷感を与える事によって、体熱感が緩和され、気持ちよくなります。

 

発熱時に、氷枕や冷却シートをを用い、
頭部や額部を冷やすと、頭痛や体熱感が緩和されるのは、
誰もが経験済みのことだと思います。

 

ただし、要介護者(利用者)が、それを不快だと感じるときは、
無理に用いないようにします。

 

氷枕や冷却シートによって、入眠の促進、鎮静効果が期待できるときには、
使用するようにします。

 

また、解熱目的のために、動脈を冷やし、動脈血の温度を下げる方法があります。

 

しかし、高齢者の場合注意したいのは、
循環不全や血栓症を起こしやすい方に対しての使用です。

 

循環不全や血栓症を起こしやすい方に対しては、
動脈血の温度を下げるための冷却は行いません。

 

また、乳幼児でも、急激な体温低下によって
ショックが引き起こされる場合があるので、注意します。

 

●熱が高いときの脈拍と呼吸数

 

熱が高くなると、脈拍や呼吸数も多くなります。

 

これは、代謝が亢進するためです。

 

脈拍は、心室の収縮によって血液が大動脈に送り込まれるときに生じる波動が
全身の動脈に伝わり、触知されます。

 

つまり、脈拍数は心臓の収縮数であり、通常は心拍数と同じです。

 

ですが、体温が上がると心筋の代謝が亢進されるので、
心筋自体も興奮性が増し、心拍数が増えます。

 

さらに、体温が上昇すると、体熱放散作用が働き、
体温を下げようとする働きが高まります。

 

このとき、関わるのは、体温調節中枢ですが、
その興奮は呼吸中枢に伝わるので、呼吸の促進が起こります。

 

また、呼吸の促進によっても、体熱放散が起こります。

 

●熱が上がるときや下がるときの発汗

 

熱が上がるときや下がるときは、体温調節が行われているので発汗します。

 

体温調節のための発汗を「温熱性発汗」といい、
体熱の産生が亢進すると、発汗によって水分が蒸発され、
体熱の放散が促されます。

 

そして、体温を恒常性に維持しようとする働きが生じます。

 

体温調節中枢は、脳内の視床下部にあり、
健康なときは、体温を37.0℃程度に保つように働いています。

 

しかし、発熱時になると、体温調節中枢は体温を下げようと、
皮膚の血管を拡張させ、多量の血液を流して、
体熱を体外へ逃がそうとします。

 

その際、体は熱く感じます。

 

体温を下げる方法として最も効果的なのは、発汗ですが、
発汗し、汗の蒸発の際に生じる気化熱によって
熱が逃げていきます。

 

暑いときや運動をしたときに汗が出るのは、
体温の上昇を防ぐために、体温調節中枢が働いているためで、
気温が高かったり、運動をしても汗が出なければ、
体温はドンドン上がり、熱中症になってしまいます。