介護福祉士を目指すための介護の技術

介護は対人援助です。

 

ですから、お互いの意思の疎通がなければより良い介護はできません。

 

そこで、介護においては双方向のコミュニケーションが基本です。

 

しかし、コミュニケーションの過程には、
騒音や悪臭などの物理的雑音、先入観や偏見などの心理的雑音、
聴覚障害や視覚障害、不適当な補聴器や義歯などの身体的雑音という
妨害要素があります。

 

この妨害要素をなるべく取除き、最小限にとどめることによって、
お互いの意思疎通が成り立つようになります。

 

また、コミュニケーションは言葉だけでなく、
様々な動作によってとることもできます。

 

イーガンは、「私は、あなたに十分な関心を持っています。」
というメッセージを示す身体面の動作を「SOLER(ソーラー)」と名づけています。

 

SOLER(ソーラー)とは、かかわりを示す基本動作のことで、
以下の5つの身体面の動作のことをいいます。

 

S: Squarely(相手と向かい合う)

 

O: Open(開いた姿勢)

 

L: Lean(相手に身体を傾ける)

 

E: Eye Contact(適切な視線)

 

R: Relaxed(リラックス)

認知症の高齢者とのコミュニケーション

認知症のある高齢者は、物忘れが激しかったり、
場所や時間を勘違いしたり、その場にあった行動を取ることができないなど、
言語以外にも様々な症状が出てきます。

 

そして、その様々な症状が原因となり、
コミュニケーションがとりにくくなり、
介護者もその高齢者と関わりにくいという問題が出てきます。

 

しかし、言語が非現実的であったり、
つじつまが合わなかったりすることもありますが、
次元をあわせ、高齢者の心を受け止めながら、
コミュニケーションを取っていくことが必要です。

 

また、認知症の高齢者は、感情面でも敏感です。

 

間違いを指摘し、事実を説得しようとすると、
不必要に興奮させてしまうこともあります。

 

高齢者の自尊心を傷つけないように、
穏やかに納得できるような話し方をすることが必要です。

 

目線を合わせて会話をしよう

 

高齢者と話をするときは、目線をあわせ、
適切なアイコンタクトをとりながら話すことが必要です。

 

「目の高さ」のことを「目線」と言いますね。

 

介護者が利用者に接する場合、車いすやベッドの上の利用者を
立ったまま見下ろすのではなく、
腰を低くし、車いすやベッドの上の利用者と
同じ目の高さで接することが大切です。

 

また、目と目を合わせたり、外したりする事を、
「アイコンタクト」といい、「視線」と言います。

 

利用者と話を聴く時には、
視線を合わせ、目をまっすぐに見て聴くようにします。

 

視線は、相手への注目や興味、愛情や敵意、軽蔑などの感情を示します。

 

そして、視線によって相手を承認したり、侮蔑することもできます。

 

利用者と良いコミュニケーションを取るためには、
相手に親近感や好意を示す必要がありますから、
優しい微笑や柔らかい表情を出しながら、
心地良い適切なアイコンタクトをとることが大切です。

 

ゆっくり話しかけよう

 

高齢者は、甲高い声が聞こえにくいです。

 

ですから、高齢者と話すときには、相手の目を見て、
ゆっくり、そしてはっきり話しかけるように心がけることが必要です。

 

高齢者の老人性難聴は、加齢に伴って神経の機能が低下する感音性難聴です。

 

具体的には、内耳の蝸牛の機能が低下する事によって、
音が聞こえにくくなります。

 

特に、高い音、甲高い音は、音がひずみ、言葉の端々が聞こえにくくなります。

 

話しかけられていることは分かっていても、
その話の中身が把握できなかったり、聞き間違いをしたりします。

 

たとえば、「サ行」は「ハ行」に、「タ行・ハ行」は「カ行」に、
「ガ行・ザ行・ダ行・バ行」は「ラ行」に、「ナ行・マ行」は「ラ行」
に、聴き間違える事があります。

 

高齢者が、聞こえが悪いと判断すると、
やたらと大きな声で話す人がいますが、
聞こえにくいからと言って、大きな声で話せば
分かってもらえるということではありません。

 

声のトーンを落とし、相手の近くでゆっくりと確認しながら、
はっきりとした口調で話しかけるようにしましょう。

 

また、中枢神経の機能も低下するため、
言葉に対する判断力も低くなります。

 

補聴器を使っても聞こえない

 

老人性難聴は、補聴器を使っても、聞こえ辛い事に変わりがありません。

 

補聴器には、老眼鏡のような「かければ見える」というような効果は期待できないのです。

 

補聴器を使用すると、確かに音は大きく伝えられます。

 

ですが、老人性難聴は、音を感じる内耳から脳にかけての神経が
痛んでしまったために起こるものですから、
周囲の雑音も一緒に大きく聞こえてしまい、
その大きな雑音の中から聴きたい音だけを聞き分けることができないのです。

 

老眼の場合は、目のレンズの厚さが調節できなくなるために起こっており、
脳へ伝達する神経が痛んでいるわけではありません。

 

そのため、老眼鏡をかければ、よく見えるようになるのです。

 

伝音性難聴

 

伝音性難聴は、耳垢塞栓や外耳道炎、急性中耳炎、慢性中耳炎などが原因となる難聴で、
殆どが治療ができます。

 

外耳から中耳(鼓膜やつち骨・きぬた骨・あぶみ骨の耳小骨)までの
音を伝える器官の障害によって起きる難聴です。

 

伝音性難聴は、音を伝える部分に障害があるため、
音を大きくする補聴器の効果は期待できます。

 

感音声難聴

 

感音声難聴は、突発性難聴など、数日のうちに治療を開始すれば
元に戻る可能性があるものもある内耳や聴覚神経の
障害によって起きる難聴です。

 

ただし、老人性の難聴の場合は、治すことはできません。

 

また、感音声難聴は、伝わった音を受容する部分に問題があるため、
補聴器の効果は殆ど期待できません。

 

声の大きさや言葉の抑揚から気持ちが伝わる

 

私たちは、客観的な事実の情報を伝えようとするとき、
感情を込めないようにして話します。

 

ですが、相手と会話をするときは、
色々な表情をしたり、
抑揚のある声で話しかけるなどして、
自分の感情や熱意が伝わるようにします。

 

たとえば、「ありがとう」と言う時、
語尾を延ばして親しみの感情をこめると、
心からの感謝の気持ちが伝わりやすくなるでしょう。

 

また、明るく快活な声や聞き取りやすい声、
適度な抑揚のある声、温かみのある声には、
好意を感じますし、魅力を感じ、
相手を肯定的に受け入れたくなり、
受け入れることができます。

 

ですが、沈んだ声や、暗い声、
キンキンとした高い声、大きなうるさい声、
小さすぎて聞こえない声、感情のない淡々とした声には、
不快感を抱きますし、
相手を否定的に評価してしまうなどします。

 

非言語的コミュニケーションを活用する

 

介護では、非言語的コミュニケーションが重要です。

 

なぜなら、利用者は、様々な動作や視線、表情などから、
様々なメッセージを伝えているからです。

 

非言語的コミュニケーションは、
音声言葉によるコミュニケーション以外の部分で行う
意思疎通のことです。

 

アメリカの心理学者メラビアンが、
聞き手が話し手のどのような行動から、
メッセージを感じ取っているかということを実験したところ、
言葉による表現は、たったの7%であり、
声の大小や話す速度、口調などの聴覚症状が38%、
そして、表情や態度、ジェスチャー等の視覚情報が55%でした。

 

つまり、会話の内容ではなく、
表情などの見た目が重視されているのです。

 

また、言語的コミュニケーションでは、
一般的に音声の大きさや高さ、抑揚、間の取り方などが、
話の内容に付随しているという事がわかります。

 

このような非言語的側面の事を準言語といいますが、
準言語は言語的コミュニケーションと切り離す事ができません。

 

相手の話を受容し傾聴する

 

相手の話は受容し、傾聴することが必要です。

 

なぜなら、相手の話を聴く時は、
一生懸命聴く事によって、豊かな人間関係を保つことができるからです。

 

「話し上手は聴き上手」という言葉があります。

 

これは、良好なコミュニケーションを取るコツでもあり、
聞き上手になるためには、以下のような心を持つことが必要です。

 

・相手の話に興味を抱き、関心を持つ。
・相手の話を聴いて反論したり、自分の考えをいうことを避け、
相手の言っていることを受容する。
・相手を敬遠するのではなく好きになる。
・相手に優しさや思いやりを持って接する。

 

さて、「受容」とは、相手の心情をあるがままに受け入れることをいいます。

 

そして、「傾聴」とは、相手の話に耳を傾け、心を込めて真剣に聴く事をいいます。

 

聞き手は、相づちを打ったり、話をオウム返しにすることも必要ですが、
それは適度に行う事が大切です。

 

親しき仲にも礼儀あり

 

介護の現場では、利用者に対して友達のように
話してはいけないと言われます。

 

なぜなら、介護従事者は、コミュニケーションにおいても、
利用者の人権を尊重しなければなりません。

 

「親しき仲にも礼儀あり。」という言葉にあるように、
利用者に対しては、経緯を持って接する事が必要だからです。

 

相手を傷つけるような言葉や幼稚語、命令語、
指示語、友達口調は使わないようにしなければいけません。

 

バイステックの七つの原則

 

アメリカの社会福祉研究者「バイステック」は、
利用者とのよりよい援助関係を構築するための7つの原則を示しています。

 

(1) クライエントを個人として捉える(個別化)。

 

(2) クライエントの感情表現を大切にする(意図的な感情表現)。

 

(3) 援助者は自分の感情を自覚して吟味する(統制された情緒関与)。

 

(4) あるがままに受け止める(受容の原則)。

 

(5) 一方的にクライエントを非難しない(非審判的態度)。

 

(6) クライエントの自己決定を促して尊重する(クライエントの自己決定)。

 

(7) クライエントの秘密を保持して、信頼感を築く(秘密保持)。

 

このバイステックの七つの原則は、
介護従事者が取るべき、基本的な姿勢を示したものでもあります。

 

介護現場でも最大限に利用し、
より効果的なコミュニケーションを行っていくようにしたいですね。

 

介護は、利用者と介護従事者との信頼関係の成立が大前提です。

 

声かけが大切

 

介護の現場では、声かけが大切です。

 

なぜなら、利用者は、声かけで、今から何をどのように行うかを知ることで、
心の準備をすることができるからです。

 

また、声かけしてもらうことによって、
何が行われているのかを確認することができ、
安心感を持つことができるからです。

 

さらに、声かけをすることは、利用者にとってだけでなく、
介護従事者にとっても的確な介護の提供、
安全・安楽の確認にもつなげていくことができます。

 

介護を行う前、行っているとき、終わった後など、
常に声かけを行っていくようにしましょう。

 

声かけの仕方

 

・介護を行う際は、利用者の体調を確認し、目的を話した上で同意を得る。

 

・今から何を行うのかを説明する。

 

・どのように残存機能を活用するのか、利用者に具体的に話す。

 

・なぜその方法をとるのかを説明する。

 

・今、何を行っているのかを説明し、実践する。

 

・介護を行っているときは、絶えず、安全・安楽の確認をするための声かけを行う。